『ゆるキャン△』の面白さ

 今更ながら、アマゾンプライムで『ゆるキャン△』を視聴した。「絵柄が好きになれないな………」なんて言っていた私だが、今ではすっかりゆるキャン△ロスで、なでしこロスである。でも、どうして女子高生がキャンプしているだけなのに12話も見続けてしまったのだろうか。この作品の良さを自分なりに考えてみた。

 このアニメは大きく分けて三つの要素に分類できる。一つ目はキャンプ、二つ目はキャラクター、三つ目が料理である。ここでは、キャンプをやったことのある経験者とやったことのない素人、という二つの視点に分けて考えていく。

 まず、一つ目はキャンプだ。アウトドアに興味がなければこのアニメは楽しめない。自転車やバイクにくくりつけられたパンパンの荷物、山道を走り切った人にしか見えない景色、なぜかずっと見てしまう焚き火。こういったキャンプでしか味わえない有意義な時間を、自宅でのんびりしながら味わえる。自分の費用や気候の心配もなく、安全で快適な自宅キャンプを満喫することができるのだ。キャンプをやったことがある人ならば、この要素だけで十分に楽しめる。では、キャンプをしたことのない素人はどう楽しめばいいのだろうか。それが、次のキャラクターに隠されている。

 なでしこ、というピンクの髪をしたキャラクターがいる。彼女は、キャンプを全く知らない初心者だが、主人公のリンに助けられたことにより、キャンプの沼にはまっていく。テントや寝袋、焚き火など、自分の知らないことに、素直に好奇心を示すなでしこは、見ていて気持ちが良い。明るい性格、って正義だ。彼女の純粋にキャンプを楽しむ姿に、素人の視聴者は自分を重ね合わせ、「羨ましいな」と思うのである。

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明るい、素直、可愛いの三拍子がそろっているスター選手。周りとの距離を読む力にも定評がある。

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暗くて、素直じゃない。なでしこは一体彼女のどこに惹かれたのだろうか。アニメという世界だからこそ成り立つ友情関係だと思う。


 三つ目の料理は、飯テロのことである。『孤独のグルメ』やYoutuberなどがよくやる「○○作ってみた」系の動画など、おいしそうな食べ物を知らない人が食べている様子、というのはついつい見てしまうものだ。それが、炭火を使った料理となればなおさらだ。食べた後の食器洗いや、グリルの掃除など、大変な作業を見なくて済む、というのもアニメならではだ。

 つまり、『ゆるキャン△』は一つ目のキャンプで、経験者を取り込みつつ、なでしこに始まるキャラクターを用いることで、素人の層も取り込んでしまうハイブリットアニメなのだ。その二つの層を料理という要素で結び付けているのにも抜かりがない。

 来年の二期へ期待は高まるばかりだ。

どうして朝井リョウのエッセイに笑ってしまうのか考えてみた

 私はエッセイを読むのが好きだ。小説家はもちろん、芸人、役者、スポーツ選手、Youtuberまでもが本を出している。読んだ後、遠いはずの成功者たちがいくらか近い存在に感じて、応援してしまう。そんなエッセイ消費マシーンの私が唯一吹き出してしまった本がある。それが、朝井リョウの『風と共にゆとりぬ』だ。

 こげ茶色の表紙と筆記体チックにかかれた金色の文字。ページ数も多くて迫力があり、さながら魔術書のようだ。しかし、内容は魔術書とはかけ離れている。人間と同じで、本も見た目だけで判断してはいけないのだ。

 私は定期的に『風と共にゆとりぬ』を読んでいる。理由はいかれたエッセイを定期的に自分に注射するためだ。

 その日の私もいつもの通り「肛門記」を開き大爆笑していると、ふと疑問が浮かんだ。「面白いっていつも思ってるけど、どうして面白いのか考えたこと無くない?」

 思い立ったら即行動。Let's try anyway! 大好きな人への贈り物、という素敵な文章を例に考えてみた。

 この本の面白さは大きく分けて二つある。一つは筆者の自虐。もう一つはボキャブラリーの豊かさである。これら二つを凝縮した次の文を見てみる。

「そんなところに妖怪馬顔猫背が鎮座するなんて……という申し訳なさにいつも心がヤられそうになるのだが」(P60)

 「鎮座」という言葉の正確な意味を知っているだろうか。何となく大きなものが存在すること、といううっすらとしたイメージだ。そこで「鎮座」を電子辞書で調べてみた。

「人や物がしっかりと場所を占めていることを、多少揶揄の気持ちを込めて言う語」と書かれていた。そう、鎮座には人をバカにするニュアンスが含まれているのだ。なんて正確かつ自虐的な言葉の使い方だろう。明日から「鎮座」使っちゃおう!鎮座!鎮座!鎮座!ってレベルで勉強になる。

 次にボキャブラリーの豊かさについてだ。「ワサビ」を「アブラナ科の植物をぐちゃぐちゃに擦ったもの」とマイナスに捉えたり、「オクラ」を「アオイ科トロロアオイ属の植物」とシュールに表現したりして、とにかく言い換えに引き出しが多い。

 このような面白形容詞で埋め尽くされているこの本だが、決して読みづらいことは無い。話を進めるための説明の文は簡素でテンポが良い。だからたくさんの自虐や大げさな表現が来ても胃もたれしない。流石直木賞作家!(何様?)

 

金スマでオードリー特集を見た感想

 これがいわゆる「第二次オードリーバブル」というものなのだろうか。深夜ラジオスターという狭い世界で覇権を握っていた二人が、金スマという超マジョリティ番組に特集されたのだ。しかも二時間丸ごとである。いくらオードリーが20周年(ナイスミドル時代から数えて)だからと言って、これはやり過ぎである。「ま、どうせ知ってることだらけだろうな」と土曜のオールナイトの予習のつもりで視聴した。

 春日の髪を切り続けた若林、生徒会の演説で泣いてしまった春日など、耳にタコができるくらい繰り返し聞いた二人の鉄板トーク。結婚までの馴れ初めなど、「なんだ、ラジオの再放送か」と私はがっかりしていた。しかし若林が泣くシーンが流れた瞬間、私はテレビの前から離れられなくなった。

 父親が隠れた。家族が少ない、減った。これらの表現で大爆笑していた春日の存在もあってか、若林はラジオで父親の死についてあまり深く話すことがなかった。そのため、私は「そこまで父親を好きではなかったのかな」と思っていた。

 しかし、違ったのだ。結婚を決めた理由も、ナナメを辞めた理由も全て父親の死が深く関係していた。私は感動し、六歳の子供がいないにも関わらず、号泣してしまった。

 父親の死、というハードすぎる経験をも笑いに昇華させてしまう若林さんは本当に格好いいし、尊敬できる。私もイタコの漫才とまではいかなくとも、日々の経験を笑い話にできるような人間になりたい。